SewiGの日記
2005-06-06 [月] [長年日記]
■ [Book] きみとぼくの壊れた世界 - 西尾維新 著
主な登場人物は櫃内様刻とその妹である櫃内夜月、様刻の友人である迎槻箱彦と琴原りりす、そして保健室にひきこもる病院坂黒猫。この人間関係が時間の流れとともに崩壊していく話です。キャラクタや舞台となる学園の設定は同氏独特の雰囲気が漂っていますが、話の展開が異質です。
様刻は妹の夜月に困ったことがあればいつでも助けてあげます。夜月はそんな兄、様刻のことが好きで、ずっと離れたくないと言います。一見すると幸せそうに見えますが、箱彦は様刻に警告します。この状況は危険で、いつこの関係が破綻してもおかしくない危険な状態である、と。それから琴原の様刻に対する突発的な出来事を目撃した夜月は壊れたように取り乱して言動がおかしくなります。この危機的状況を回避する最良の選択は・・・ 様刻は泥沼に嵌る選択をしてしまいます。問題は解決してもそれが幸せであるかどうかは分からないのです。様刻に降りかかる問題は夜月に限った話ではなく、互いに付かず離れずの関係を保っている探偵役の病院坂、クラスで気さくに会話をする琴原との関係。
このように、とても脆い人間関係の壊れ行く様を垣間見ることができるおもしろい作品です。禁断の恋、近すぎてまわりが見えない友人関係、ミステリーへの導入となる鍵、世界は自分達とは違う時間を流れているということ。同分野としては特殊で確実に人を選ぶ作品だと思います。こういう状況って今なら結構ありがちな問題のような感じがします。ひきこもりは本当に1人でいたいと思っていないはずです。ネットワーク上で元気なひきこもりは世界との繋がりを求めているからです。しかし、それは最良の選択なのでしょうか。ずっとそのままなのは脆くて悲しいような気がします。そんなことを考えさせる、とても着眼点が鋭い作品だと思います。