SewiGの日記
2005-03-31 [木] ライフワークは音楽 電子楽器の開発にかけた夢 - 梯郁太郎著
■ [Book] ライフワークは音楽 電子楽器の開発にかけた夢 - 梯郁太郎 著
ローランドの創始者である梯郁太郎さんの電子楽器製作人生を細かく記したものです。
ローランドでは数多くの技術を生んできましたが、MIDIについて特に印象に残っています。同じ演奏情報を異なるシンセサイザーで鳴らし、曲の雰囲気を大きく変えることができます。これはMIDI規格が誕生し現在流通しているあらゆる電子楽器にMIDI端子が搭載されていることによって可能となっています。これだけ広く普及した背景にはMIDI規格において規格草案当時もっともコストの掛からないDIN 5pinを採用したことでしょう。部品の流通を考慮したもので、梯郁太郎さんが時計の修理で問題になった部品の調達のノウハウが生かされています。規格が広がるためには、規格をオープンにし、どのメーカでも実装しやすい規格であるべきなのです。また規格を広めることは業界全体の活性化を促し、自社も活性化するのです。
それから電子楽器の誕生について。新しい分野への挑戦には様々な障害があります。1960年代、電子楽器は新しい分野であり、取引銀行へは何度も電子楽器とはこういうものだと説明し、役所からは楽器ではなく規定外の商品を製造していると言われ、海外からシンセサイザーを輸入するにも税関で「冗談じゃない、これが楽器か?証拠を見せろ」と税関で止められ、資料も稀少でした。しかし、演奏者である冨田勲さんの功績もあり、まったく新しい音を奏でる音楽が聞けるようになりました。
梯郁太郎さんの考えには学ぶことが多かったです。特に印象に残ったものを紹介します。
- 技術者と経営者の葛藤
技術者であり経営者である梯郁太郎さんは、会社を存続させるためには、当時学術機関などで導入されていた高額の大型楽器を捨て、より大衆向けの安価な小型楽器を優先するという決断です。技術者としては、また大型楽器を作るために入社した方もいたらしく、本人は社員も残念だった決断です。ただ、この選択が正しかったことは、後に大型楽器の会社が倒産したこと、現在のシンセサイザー事情からも分かります。一時的な損失に惑わされず会社としては技術よりも経営という選択肢もあるという考えは私には思いもつきませんでした。いつかこういう事態があらゆる技術者に起こりうるのかと。
この本からは楽器、特にオルガン・シンセサイザーの歴史やまったく新しい分野での会社立ち上げについて学ぶことが多かったです。第9章のMIDIのスタートはかなりオススメです。ぜひ読んでみてください。
● うろちいいせ んし [MIDIはなくてはならない技術ですね!ローランドのGS規格を支持しますw XGも好き。]
● SewiG [データ送受信の規格であるMIDIはいいとして、音源の規格であるGS,XGはブロードバンド時代の今では影が薄くなってき..]